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社員が辞める前の組織点検とは?

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「以前より発言が減った」「定時で帰る日が増えた」といった変化を見ると、退職の前兆ではないかと不安になることがあります。しかし、同じ行動には仕事以外も含むさまざまな背景があり、外から見える態度だけで本人の意思を読み取ることはできません。

そこで見るべきなのは、個人の様子ではなく、相談が判断につながっているか、修正や例外対応が一部に集中していないかという仕事の流れです。本稿では、管理職がチーム運営を点検し、対話と業務改善を始めるための3つの観点を整理します。

この記事の結論

点検するのは、「相談と提案」「判断と修正」「例外対応と負荷」です。個人を順位付けせず、チーム単位で仕事の変化を確認し、判断基準、役割、手順など組織側の改善につなげます。

この記事の要点

  • 3つの業務指標はSHIOパートナーズ独自の整理であり、退職の予測モデルではない
  • 個人を順位付けせず、チーム単位で仕事の変化を確認する
  • 件数だけで結論を出さず、背景を対話で確かめる
  • 点検後は、判断基準や役割、手順など組織側を一つ変える

個人の態度から退職を予測できる?

同じ行動にも複数の背景があるため、外から見える態度だけで本人の退職意思は判断できません。個人の前兆探しに偏ると、組織側の仕事の詰まりを見落としやすくなります。

たとえば、会議での発言が減った理由は、退職を考えているからとは限りません。担当案件が落ち着いている、事前資料で疑問が解消した、家庭の事情がある、発言しても判断が返らないと感じているなど、異なる可能性があります。休暇や定時退勤も同様です。単一の行動に意味を付け、本人を観察して答えを当てようとする運用は避けるべきです。

離職研究を100年分概観したHomらのレビューでも、従業員の離職は多様な理論や要因から研究されています。これは「この行動があれば退職する」という単純な読み方が難しいことを示します。

以下では、架空の「15人の法人営業チーム」を通して使い方を見ます。このチームでは、ある社員の退職を予測するのではなく、最近増えた手戻りをきっかけに、仕事の流れを一か月だけ振り返ることにしました。

「相談と提案」で何を点検する?

相談件数の多少ではなく、問題になる前に懸念を出せたか、出された声に管理職が返答したかを確認します。相談が減った事実だけでは、良化とも悪化とも判断できません。

役割や手順が明確になり、自律して進められるようになれば、相談は減ります。一方で、相談しても返事がない、忙しそうで声をかけにくい、改善を提案すると自分の仕事が増える、と感じても相談は減ります。従業員の発言と沈黙を扱ったMorrisonの研究レビューや、上司の行動と従業員の改善提案の関係を扱ったDetertとBurrisの研究は、声の量だけでなく、受け取る側の環境も見る必要性を考える材料になります。

法人営業チームでは、直近10件の提案を確認しました。以前は着手前に出ていた確認が、完成後の差し戻し時に初めて出ていました。そこで「相談しなかった担当者」を探すのではなく、相談から返答までの日数、未回答の論点、着手前に確認できた案件をチーム単位で記録しました。

問いは「誰が黙っているか」ではなく、「懸念を早く出しても仕事が進む運用か」です。相談の場を増やす前に、出た相談へ誰がいつ判断を返すかを決めます。

「判断と修正」で何を点検する?

承認待ち、差し戻し、最終修正が同じ人へ集まっていないかを見ます。集中が見つかっても、担当者や上司の能力ではなく、判断基準と権限の設計を点検します。

部下が作った提案書を部門長が毎回直す、担当者の不在で案件が止まる、完成後に新しい条件が追加される。この状態では、任せられた側はどこまで決めてよいか分からず、安全のために判断を待つようになります。上司も最後の穴を埋め続けるため、本来の仕事に使う時間を失います。

架空のチームでは、10件中8件を部門長が最終修正し、承認待ちは平均3営業日でした。これは説明用の仮想数値であり、一般的な基準ではありません。チームは、金額、顧客への影響、値引きの有無という承認条件を明文化し、その内側は担当者が進める試行を始めました。

計測できる場合は、承認までの日数、差し戻し回数、同じ人が最終修正した案件の割合を見ます。数字がなければ、直近5件について「誰が、どこで、何を判断したか」を並べるだけでも構いません。

「例外対応と負荷」はどう見る?

予定外の仕事について、発生理由、引き受けた役割、使った時間、次回の扱いを短期間だけ記録します。例外をなくすのではなく、同じ例外を善意で繰り返していないかを見ます。

急な顧客要望、担当者の代行、資料の作り直し、別部署との調整は、「少し手伝っただけ」と処理されがちです。予定表には残らなくても、集中力と時間を使います。顧客や事業の変化に対応するため、例外が必要な場面はあります。問題は、同じ種類の例外が続いても標準業務へ戻す判断がないことです。

法人営業チームでは、一か月に同じ資料の作り直しが6回あり、うち5回を経験の長い2人が引き受けていました。これも架空の例です。誰が不満を抱えているかは推測せず、作り直しの理由を確認すると、提案前に必要な顧客情報が様式に含まれていませんでした。次月は入力項目を一つ追加し、同じ例外が減るかを確かめることにしました。

「今回だけ」が3回続いたら必ず問題、という一律の基準はありません。業務の頻度や影響を踏まえ、標準化するか、担当を決めるか、例外として受けるかをチームで判断します。

3指標をどう組み合わせて見る?

単月の一項目だけで結論を出さず、複数の変化が同じ仕事の流れに重なっているかを確認します。変化が見つかったら、原因を決め付けず、現場との会話で仮説を確かめます。

架空のチームでは、相談の遅れ、部門長への修正集中、資料の作り直しが、いずれも提案作成の流れで起きていました。そこで「退職リスクが高い人」を選ぶのではなく、「提案前の情報と判断条件が足りないのではないか」という組織側の仮説を置きました。

確認する期間と範囲も限定します。たとえば一つのチームで直近一か月を振り返り、案件名、判断の場所、対応時間など、仕事上必要な事実だけを扱います。個人を点数化したり、3指標を組み合わせて退職確率を出したりはしません。閲覧者と利用目的を先に決め、目的のない個人データを集めないことも大切です。

会話では「最近、着手後の修正が増えている。どこで判断しにくかったか」「例外対応のうち、次から手順に入れたいものは何か」と仕事の具体から聞きます。数字は答えではなく、対話を始める材料です。

個人監視せず改善につなげるには?

結果を人事評価や退職者探しから切り離し、チームの定例で扱います。個別の健康状態や労務対応が必要な場面では、3指標から推測せず、本人との対話と社内担当者・専門家への確認を優先します。確認後は、組織側の変更を一つ決め、同じ定義と範囲で変化を見ます。

法人営業チームは、提案前の顧客情報を一項目追加し、承認条件を一枚にしました。翌月に見るのは、着手前に確認できた案件、承認待ち日数、同じ資料の作り直し回数です。改善すれば運用を続け、変わらなければ「本人の意欲が低い」と解釈せず、仮説か変更内容を見直します。

相談が少ないチームは危険ですか?

件数だけでは判断できません。自律して進められている場合もあるため、相談後の返答、手戻り、問題が表面化する時期と合わせて確認します。

3指標で社員の退職を予測できる?

できません。3指標はチームの業務運営を見直すために使い、個人の順位付けや退職意思の判定には使いません。

今日の点検は何から始めればよい?

一つのチームと直近一か月に範囲を絞り、3つの問いを30分で確認してください。変化があれば、社員の態度ではなく、来月までに変える仕事の仕組みを一つ決めます。

問いは「問題になる前の相談はあったか」「判断と最終修正は誰に集まったか」「今回だけの対応が繰り返されていないか」です。答えには性格や意欲の評価を書かず、案件、工程、待ち時間、対応内容など確認できる事実を置きます。

社員を見張る仕組みを増やす必要はありません。まず、相談への返答期限を決める、承認条件を一つ書く、繰り返す例外を一つ手順へ移す。そのうち、現場が始めやすいものを一つ選んでください。

自社だけでは複数の変化を仕事の流れへ整理しにくい場合は、SHIOパートナーズへご相談ください。個人の退職を予測するのではなく、経営課題と人材課題を分け、最初に見直す業務と判断基準を一緒に整理します。