お役立ちコラム

営業成績が上がらない

作成者: 石神 嘉代郎|Apr 6, 2026 11:00:00 PM

営業成績が上がらないのは「個人のスキル」が原因だと思っていませんか?

「今月の目標も未達になりそうだ…」「なぜメンバーは思ったように動いてくれないのか…」

営業部門を率いる管理職や、将来の事業計画に責任を持つ経営層の方々にとって、「営業成績が上がらない」という悩みは、尽きることのない頭痛の種ではないでしょうか。

特に、プレイヤーとして優秀な成績を収めてきた管理職の方ほど、「なぜ彼らは売れないのか?」「もっとこうすればいいのに」と、メンバー個人のスキルや熱量に原因を求めてしまいがちです。

しかし、少し立ち止まって考えてみてください。本当に問題は「個人のスキル」だけにあるのでしょうか?

もし、あなたの組織で「売れる人」と「売れない人」の差が激しかったり、特定の「エース」に依存した属人的な体制になっていたりするならば、それは危険信号です。なぜなら、それは組織としての「営業の仕組み」が機能していない証拠だからです。

「営業」は、個人のスキルやセンス、そして気合と根性だけで戦う場所ではありません。持続的に成果を出し続ける強い組織には、必ず再現性のある「勝利の方程式」、すなわち「仕組み化された営業プロセス」が存在します。

本コラムでは、精神論のマネジメントから脱却し、組織全体の営業成績を底上げするために不可欠な「営業の仕組み化」について、具体的なステップを解説していきます。

営業成績が伸びない訳

「スキル不足」という思い込み

多くの管理職は、目標が達成できない原因を真っ先に「メンバーのスキル不足」や「行動量不足」だと決めつけてしまいがちです。「彼らのアプローチが下手だからだ」「もっと訪問件数を増やせば売れるはずだ」といった具合です。

もちろん、個人のスキルアップは重要ですが、それだけに焦点を当ててしまうと、組織としての根本的な問題を見落としてしまいます。自分自身がプレイヤー時代に感覚的に行っていた「売れるための行動」を言語化・標準化できていないが故に、「なぜ彼らはできないのか」という苛立ちばかりが募ってしまうのです。

現場との深刻な「温度差」

一方、現場のメンバーはどのように感じているでしょうか。管理職から「もっと売れ」「とにかく行動しろ」と言われるたびに、「無理な数字を押し付けられている」という反発心が生まれ、管理職と現場の間に深刻な温度差が生じています。

具体的な方法は教わらず、ただ数字だけを求められる環境では、メンバーは疲弊し、モチベーションは低下します。結果としてさらに成績が上がらないという悪循環に陥ってしまいます。

真のボトルネックは「プロセス」

営業成績が伸び悩む多くの組織に共通しているのは、実はスキル以前に「プロセス設計・役割分担」が曖昧なことがボトルネックになっているという点です。

例えば、「アポイント獲得」から「初回商談」「提案」「クロージング」に至るまでの流れの中で、どの段階で何を確認し、どのような状態になれば次のステップに進めるのか。この基準が人によってバラバラでは、組織としての再現性は生まれません。問題は個人の能力ではなく、「プロセスの設計図」が不在であることにあるのです。

「根性論」マネジメントの罠

「量」偏重の弊害

仕組みのない組織では、成果が出ない時の改善策が「もっと訪問件数を増やせ」「もっと電話しろ」といった、量だけを求める指示になりがちです。いわゆる「根性論」のマネジメントです。

一時的に数字が改善することはあるかもしれませんが、これは根本的な解決にはなりません。メンバーは疲弊し、質の低いアポイントを量産するだけに終わる可能性もあります。なにより、現代のビジネス環境において、ただ闇雲に行動量を増やすだけのスタイルは通用しにくくなっています。

メンバーの自信喪失

「量」を追求しても結果が出ない場合、次に管理職の口から出るのは「やる気がない」「向き不向き」といった精神論や適性の話です。

具体的な改善プロセスを示さずに人格や適性を否定されては、メンバーの自己肯定感は下がる一方です。「どうせ自分はダメなんだ」と諦めの境地に至り、自信を喪失して離職につながるケースも少なくありません。

 

管理職が抱える隠れた不安

実は、根性論に走ってしまう管理職自身も、心の中では「どう改善すべきか分からない」という不安を抱えています。

かつての自分の成功体験が通用しない、論理的なプロセス設計の方法を知らない。そのような不安や焦りが、手っ取り早い「気合論」への逃避につながっているのです。この構造的な問題に気付き、マネジメントスタイルを変革する勇気を持つことが、第一歩となります。

営業プロセスを分解する

現状プロセスの棚卸し

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。まずは、自社の営業活動を「プロセス」に分解し、棚卸しすることから始めましょう。

一般的には「リード獲得(接触)」「アポイント獲得」「初回商談(ヒアリング)」「提案」「見積提出」「クロージング(受注)」「アフターフォロー」といった流れになります。現在の営業活動がこれらのどのフェーズにあるのか、チーム全体で共通認識を持つことが重要です。

役割と定義の明確化

プロセスを分解したら、それぞれの段階で求められる「役割・アウトプット・必要スキル」を切り分けて整理します。

例えば「初回商談」のゴールは「受注」ではなく、「顧客の課題を特定し、次の提案アポを獲得すること」かもしれません。そのために必要なスキルは「ヒアリング能力」であり、アウトプットは「ヒアリングシートの記入」となります。このように切り分けることで、漠然としていた営業活動が具体的なタスクの積み重ねとして可視化されます。

再現性のあるフロー構築

プロセスごとの定義が明確になれば、個人の「センス」に任せていた部分を排除し、チームとして再現性のある営業フローを作ることができます。

「トップセールスの〇〇さんは初回商談で必ずこれを聞いている」といった属人的な「勝ちパターン」を標準的なフローとして組み込むことで、誰がやっても一定の成果が出せる強い組織へと進化します。

BANT情報を仕組み化

共通言語としての「BANT」

営業プロセスの中で特に重要なのが、顧客情報の収集です。その際に共通言語として導入したいのが「BANT(バント)」情報です。

  • Budget(予算): 予算は確保されているか、いくらぐらいか。

  • Authority(決裁権): 誰が最終決定権を持っているか。

  • Needs(ニーズ): どのような課題があり、何を求めているか。

  • Timing(導入時期): いつ頃までに導入したいか。

これら4つの情報は、案件の確度を見極めるための必須項目です。

ヒアリングと記録の定着

BANT情報は、営業担当者の頭の中や個人のノートに留めておいてはいけません。SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)などのツールを活用し、組織の資産として蓄積する必要があります。

ヒアリング項目をテンプレート化し、商談報告の際には必ずSFA/CRMに入力することを業務フローとして義務付けましょう。これにより、情報の抜け漏れを防ぎ、データに基づいた営業活動が可能になります。

事実ベースの判断基準

「BANTが全て揃っていれば確度A」「ニーズと時期は明確だが予算が未定なら確度B」といった具合に、BANTの充足度で案件ステータスを定義します。

これにより、「いけそうな気がする」といった感覚ではなく、事実ベースで見込み度を判断できるようになります。これは正確な売上予測(フォーキャスト)を行うためにも不可欠な仕組みです。

一歩ごとの積み上げを見える化

中間KPIの重要性

営業のゴールはもちろん「受注」ですが、それだけを評価指標(KGI)にしていると、プロセスが軽視されがちです。受注だけでなく、アポ獲得数・BANT取得率・提案数など、プロセスを測る「中間KPI」を設定しましょう。

これらを追うことで、どこで躓いているのかボトルネックが明確になり、具体的な改善アクションが取りやすくなります。

日々の「前進」を可視化

設定したKPIは、日報やダッシュボードで「昨日より前進したこと」が分かるように可視化します。

「今日何件受注したか」だけでなく、「今日はBANT情報を何件取得できたか」「次のステップに進んだ案件は何件あったか」といった、プロセスにおける進捗を確認するようにします。

小さな成功へのフィードバック

営業は断られることの多い、精神的にタフな仕事です。結果が出ない時期が続くと、心が折れそうになることもあるでしょう。

そんな時、管理職は「受注」という最終結果だけでなく、KPIに基づいた「小さな前進」をしっかりと評価し、ポジティブなフィードバックを行うことが重要です。「今日は決裁者の情報が聞けたね、大きな一歩だ」「提案まで進めたのは素晴らしい」といった声掛けが、メンバーのモチベーションを維持し、次の行動への活力を生み出します。

管理職に求められる役割

設計者への役割転換

営業の仕組み化を進める上で、最も変わらなければならないのは管理職自身の意識です。「できていない部下を責める人」から、「プロセスを設計し、障害を取り除く人」へと役割転換する必要があります。

メンバーが躓いている原因が、本人のスキルではなく、仕組みの不備にあるのなら、それを改善するのが管理職の仕事です。

仕組み作りへの投資

プレイングマネージャーとして自身の数字を追いながら、部下の育成も行うのは大変なことです。しかし、個別のスキル指導だけに時間を使うのではなく、一度立ち止まって「仕組み・環境づくり」に時間を投資する意識を持ちましょう。

仕組みが整えば、マネジメントの工数は削減され、メンバーは自律的に動けるようになります。短期的には大変でも、中長期的には最もレバレッジの効く投資となるはずです。

全体最適の橋渡し役

最後に、営業プロセスの設計は営業部門だけで完結するものではありません。経営層が描く事業戦略や、マーケティング部門が獲得するリードの質とも密接に関わっています。

管理職には、現場の視点だけでなく、経営・マーケティング・営業をつなぐ「橋渡し役」としての視座が求められます。会社全体の目標達成に向けて、各部門がどのように連携し、最適なプロセスを構築すべきか。その全体像を描き、推進していくことこそが、これからの営業リーダーに求められる真の役割と言えるでしょう。

株式会社SHIOパートナーズでは、精神論ではない「勝てる営業組織」の構築に向けた、営業プロセスの設計からSFA/CRMの定着、マネジメント層の育成まで、一貫したコンサルティングを提供しています。「仕組み化」の第一歩を踏み出したいとお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。